2022年 北嶺中学校 理科(1)

2022年度 北嶺中学校 理科 分析と解説(大問1~2)

本年度入試では,例年通り大問は4問,小問総数も昨年とほぼ同じ24問(2021年度は25問)でした。

このうち、大問1は化学分野から単問形式で出題される問題、

大問2は生物分野,大問3は物理・地学分野の複合問題,大問4が物理分野の問題でした。

大問3の大半が浮力の計算問題となっており、例年に比べて物理分野の比重が高い内容であったといえます。

難易度は,

暗記分野では比較的平易な出題が多く,

計算分野でやや難度が高い出題が多いというのが,

北嶺中学校の例年の出題傾向です。

 

2022年度の出題内容は,次の通りです。

大問1 (化学分野) 解説はこちら

(1) 指示薬(フェノールフタレイン)の色と石灰水の性質
炭酸カルシウムをふくむもの
気体発生量に関する計算問題
二酸化炭素の性質
(2) 水の三態変化
(3) さまざまな物質の沸点と融点

大問2 (生物分野:食物連鎖と人体のしくみ) 解説はこちら

食物連鎖
1㎤あたりの細胞数に関する計算問題
肝臓の機能
呼吸に関する計算問題

大問3 (地学分野:地質、化学分野:浮力) 解説はこちら

ジオパークについて
マグマの構成物質
⑶~⑹ 浮力に関する計算問題

大問4 (物理分野:電気) 解説はこちら

静電気と関係が深い現象
静電気(クーロン力)と磁石(磁力)の共通点
⑶~⑹ 金属板の内部における電子の移動

 

◎大問1

(1)

フェノールフタレインはアルカリ性の水溶液を検出する指示薬です。

通常は無色透明ですが、アルカリ性の水溶液に入れると赤色に変化します。

フェノールフタレインとは反対に、酸性の水溶液を検出する指示薬としてメチルオレンジがあります。

\(\underline{\rm{答. イ、アルカリ性}}\)

 

石灰水は水酸化カルシウム(消石灰)の水溶液です。石灰水に二酸化炭素をふきこむと、水酸化カルシウムの中にあるカルシウムと二酸化炭素が反応して炭酸カルシウムと水が作られます。

炭酸カルシウムは水にとけないため、水溶液中にちんでん物として現れます。石灰水に二酸化炭素をふきこむと白くにごるのは、このためです。

ア~クのそれぞれの物質は、次の通りです。

ア\(\cdots\)重曹(炭酸水素ナトリウム)

イ\(\cdots\)炭酸カルシウム

ウ\(\cdots\)ショ糖という、ブドウ糖と果糖が結合した物質です。

エ\(\cdots\)炭素

オ\(\cdots\)炭酸カルシウム

カ\(\cdots\)ロウという、炭素と水素が結合した物質です。

キ\(\cdots\)硫酸カルシウム

ク\(\cdots\)炭酸カルシウム

このうち、イとオは身近な物質なので覚えている人も多いかと思います。クは、「真珠は貝がらの内側に作られる」ことを知っていれば見つけられるでしょう。身の回りにある物質や現象について、注意力をもって観察しておくことが大切です。

\(\underline{\rm{答. イ、オ、ク}}\)

 

この問題のように、2種類の物質を反応させて気体を発生させる場合、両方の物質の量から気体の発生量を考える必要があります。

炭酸カルシウムと塩酸を反応させて発生した気体(え)は二酸化炭素です。

表より、塩酸が十分にあるとき、炭酸カルシウム0.1gにつき二酸化炭素が24㎤発生することが読み取れます。

また、炭酸カルシウム0.5gと塩酸100㎤が過不足なく反応すると、二酸化炭素が120㎤発生します。

炭酸カルシウム4gと過不足なく反応する塩酸の量は、100×\(\frac{4}{0.5}\)=800(㎤)なので、用意された塩酸1000㎤は炭酸カルシウム4.0gに対して十分あることがわかります。

塩酸が十分にあるとき、炭酸カルシウムの量と二酸化炭素の発生量は比例するので、4gの炭酸カルシウムが反応して発生する二酸化炭素は24×\(\frac{4}{0.1}\)=960(㎤)です。

\(\underline{\rm{答. 960cm^3}}\)

 

二酸化炭素の性質について問われている問題です。それぞれの選択肢に対応する気体は、

ア\(\cdots\)水素

イ\(\cdots\)アンモニア

ウ\(\cdots\)窒素

エ\(\cdots\)酸素

オ\(\cdots\)二酸化炭素

カ\(\cdots\)塩化水素

です。

\(\underline{\rm{答. オ}}\)

 

 

(2)

水の三態変化に関する問題です。

空気中にある水の粒は、白いけむりのように見えます。自然現象としては、空にあると雲、地表近くにあると霧と呼ばれます。

この問では、気体である水蒸気が液体である水に変化したことを示していない選択肢を探します。

ア\(\cdots\)ドライアイスによって空気中の水蒸気が冷やされ、水のつぶになっているものが白いけむりの正体です。よって、水が気体から液体になったことを示しています。

イ\(\cdots\)液体である湯が熱によって水蒸気になった後、周りの空気に冷やされて水にもどったものが湯気です。よって、水が気体から液体になったことを示しています。なお、湯気はその後すぐに蒸発して水蒸気になります。

ウ\(\cdots\)空気中の水蒸気が、0℃以下に冷えたものの表面で昇華して氷(固体)になったものが霜です。よって、水が気体から液体になったことを示していません

エ\(\cdots\)吐く息に含まれる水蒸気が、周りの空気に冷やされて水にもどったものが白い息です。よって、水が気体から液体になったことを示しています。これは湯気と同じもので、同様にその後すぐに蒸発して水蒸気になります。

オ\(\cdots\)空気中の水蒸気が、コップの表面に冷やされて水になったもので、露といいます。よって、水が気体から液体になったことを示しています。

カ\(\cdots\)空気中をただよっている水の粒が、気温の上昇にともなって蒸発し、水蒸気となっています。よって、水が気体から液体になったことを示していません

\(\underline{\rm{答. ウ、カ}}\)

 

 

(3)

物質の融点と沸点に関する問題です。

表より、液体の窒素の温度は-210℃以上-196℃以下となります。

ここから、液体の窒素によって固体に変化させることができないものは、融点が-210℃未満のものに限られます。

選択肢のなかでは、アの水素とオの酸素がこれにあたります。

\(\underline{\rm{答. ア、オ}}\)

 

 

 

◎大問2

(1)

食物連鎖についての問題です。

地球上の生物の間には、「食べる・食べられる」の関係が何重にも構築されており、これを食物連鎖といいます。

食物連鎖に登場する生命は、次のように分類されます。

・生産者\(\cdots\)光合成によって水と二酸化炭素からエネルギーを生産する存在です。植物や、植物プランクトンなどがこれにあたります。

・第一次消費者\(\cdots\)生産者を食べる存在です。草食動物や、動物プランクトンなどがこれにあたります。

・第二次消費者\(\cdots\)第一次消費者を食べる存在です。肉食動物や、プランクトンを食べる魚などがこれにあたります。

・第三次消費者\(\cdots\)第二次消費者を食べる存在です。草食動物や肉食動物を食べる動物(大型の肉食・雑食動物や鳥類)、小型の魚を食べる魚などがこれにあたります。人間も、ここに分類されています。

他に、動植物のフンや死骸を養分とする、菌類などの「分解者」が存在しています。

 

FとGは食物連鎖の最下位に位置する「生産者」です。川にあるFがイのシオグサ、陸にあるGがアのイネです。

EとDは「第一次消費者」です。川にあるEが落葉食・藻食と書いてあるウのトビケラ、陸にあるDがエのバッタです。

AとBは川における「第二次・第三次消費者」です。肉食魚類のアマゴか肉食昆虫のカゲロウがあてはまりますが、アマゴがカゲロウを食べる関係にあると推測できるので、Aはカのアマゴ、Bはキのカゲロウです。

残るCは雑食昆虫と書いてあるオのカマドウマです。

\(\underline{\rm{答. B\cdotsキ、D\cdotsエ}}\)

 

ハリガネムシが存在しなくなった場合の食物連鎖の関係は、右の図のようになります。

アマゴはエネルギーの60%をたよっていた陸上の昆虫を食べることができなくなり、かわりにカゲロウやトビケラを食べるようになります。

また、カマドウマを食べる存在はなくなるため、カマドウマの数は増加すると考えられます。

したがって、カゲロウ、トビケラ、バッタ、イネの数は減少します。

トビケラの数が減るので、落葉とシオグサの食べられる量は減り、シオグサの数は増加します。

以上より、イの「D(バッタ)の数が増加する」ことは考えられません。

\(\underline{\rm{答. イ}}\)

 

 

(2)

立方体の体積の比は、1辺の長さの比の3乗(立方数)です。

体積が1㎤の立方体の1辺の長さは1cmです。肝細胞の1辺の長さは0.02mmなので、1辺の長さの比は1cm:0.02mm=500:1です。

よって、体積の比は500×500×500:1×1×1=125000000:1となります。

\(\underline{\rm{答. オ}}\)

 

 

(3)

ウとオは腎臓について述べた文章なので誤りです。

\(\underline{\rm{答. ウ、オ}}\)

 

 

(4)

1回の呼吸で体内に取り込まれる酸素の割合は、21-16.5=4.5(%)です。

また、1回の呼吸で体内から排出される二酸化炭素の割合は、4-0.04=3.96(%)です。

これより、呼気と吸気を比べると、呼気に含まれる酸素の方が、吸気に含まれる二酸化炭素よりも4.5-3.96=0.54(%)多いことがわかります。

呼気および吸気1回の体積が500㎤、1分間の呼吸回数が15回なので、1分間の呼気および吸気の体積は500×15=7500(㎤)です。

よって、1分の呼気と吸気を比べると、酸素が7500×\(\frac{0.54}{100}\)=40.5(㎤)多いことになります。

問題文の指示より、小数第一位を四捨五入して、答えは41㎤です。

\(\underline{\rm{答. 酸素が41cm^3多い}}\)

 

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