2016年 立命館慶祥中学校 理科(1)

 

立命館慶祥中学校の理科は、75点満点で実施されます。

2016年度入試での理科の得点状況は以下の通りでした。

全体の平均点は、

一般受験者が35.8点、

一般合格者が43.5点、

セミナー・個性受験者が36.8点、

セミナー・個性合格者が42.1点でした。

SPコースだけの平均点は、

一般受験者が40.2点、

一般合格者が58.4点、

セミナー・個性受験者が42.2点、

セミナー・個性合格者が54.1点でした。

また、全入試区分を合わせての最高点は69点でした。

試験問題全体を通して、難問というべき問題は見当たらず、

標準的な難度の問題が並びました。

中学入試の理科としては、かなり易しめの問題だと言えますが、

平均点は意外に伸びませんでした。

最終の大問Ⅳは、ある地域に生息する特定の動物の個体数を推測する問題でした。

中学入試ではよく見られる出題ですが、初めて目にする受験生にとっては、

かなり難しかったと思われます。

2017年度入試でも、理科は本年度なみの難度が予想されます。

SPコース志望で算国のどちらかに弱点を持つ受験生にとっては、

『特進クラスの理科・有名人気校対策問題集』などの中難度の問題集を秋までに完璧に仕上げて、

理科で高得点をねらうという「作戦」も有効かもしれません。

物理・化学分野の高難度の計算問題の解法よりも、

生物・地学分野をふくめた全分野で、

はば広く基礎的な知識の習得が要求される入試です。

2016度の出題内容は、次の通りです。

大問Ⅰ

〔1〕物理分野から、基礎的な知識を問う問題3題

〔2〕化学分野から、「水溶液」についての問題2題

〔3〕物理分野から、「圧力」についての問題

大問Ⅱ

〔1〕地学分野から、「月の満ち欠け」についての問題3題

〔2〕生物分野から、「モンシロチョウの育ち方」についての問題

〔3〕地学分野から、「天気」についての問題2題

大問Ⅲ 物理分野から、「力学」(てこのつり合い・ばねののびちぢみ)の問題6題

〔1〕物理分野から、「てこのつり合い」の問題2題

〔2〕物理分野から、「重心」についての問題

〔3〕物理分野から、「てこのつり合い」の問題2題

〔4〕物理分野から、「ばねののびちぢみ」の問題2題

大問Ⅳ 生物分野から、ある地域に生息する特定の動物の個体数を推測する問題8題

今回は、大問Ⅰを解説します。


大問Ⅰ

2016-ritk-science1-1

〔1〕

(1)

面白さ☆  難度A

アの回路だけが直列つなぎなので、回路の□の部分が電気を通さないと、豆電球は点灯しません。

イからエの回路はすべて並列つなぎなので、□の部分が電気を通さなくても豆電球はつきます。

反対に、イからエの回路の□の部分に、抵抗が小さくて電気をよく通すものをつなぐと、

その部分に大量の電気が流れてショートしてしまい、豆電球にはほとんど電流が流れません。

答え ア

(2)

面白さ☆  難度A

(1)で説明したように、イからエの回路の□の部分に、

抵抗が小さくて電気をよく通すものをつなぐと、

その部分に大量の電気が流れて熱が発生します。

答え 3つ

(3)

面白さ☆☆☆  難度B

表の①は、電気を通して磁石にもつくのでスチール缶(鉄)、

③は、電気を通すが磁石にはつかないのでアルミニウム缶、

②と④は、電気を通さず磁石にもつかないのでプラスチック容器と紙の箱であることがわかります。

リサイクルマークはよく目にするものですが、

実際のマークには図の矢印の中に、スチール、アルミ、プラ、紙というように、

製品の材質を示す文字が書かれています。

この問題のように、文字の部分を消して出題されると意外にわかりにくいものです。

日ごろのゴミの分別を、保護者にまかせっきりにせず、

自分から積極的に取り組んでいる受験生にとっては簡単な問題だったはずです。

ごみの分別にかかわらず、自分のまわりで起こるいろいろな自然現象や、

社会全体が守るべきルールとしての制度について、

日ごろから関心を持ってその仕組みを理解するようにしましょう。

実際のリサイクルマークは次のようになります。

2016-ritk-science1-2

本問では、③のアルミニウム缶を選ぶので、正解はイになります。

答え イ

〔2〕

(1)

面白さ☆  難度A

重曹は炭酸水素ナトリウムという物質で、化学式ではNaHCO3と表されます。

重曹は常温では白色の粉末で、水に少し溶けて、

水溶液はきわめて弱いアルカリ性を示します(フェノールフタレインを加えても赤く変色しません)。

重曹に塩酸やさく酸などの酸を加えると、二酸化炭素を発生します。

また、重曹を加熱すると分解して、水と二酸化炭素ができます。

加熱によって二酸化炭素を発生する性質から、

重曹を食材に練りこんで加熱するとふわふわ、サクサクした生地ができます。

このため、ベーキングパウダー(ふくらし粉)の主成分として、

クッキーやパンケーキなどをふくらませるのに用いられます。

また、中華めん(ラーメン)を打つ時に加える「かん水」は、重曹の水溶液です。

スーパーなどの食品売り場では、広く「タンサン」という商品名で販売されているので、目にした人も多いでしょう。

ここでは、

「重曹に酸性の水溶液である塩酸を加えると二酸化炭素が発生する」

という知識がなくても、発生した気体を石灰水に通すと白くにごることから、

この気体が二酸化炭素であることがわかります。

答え 二酸化炭素

(2)

面白さ☆  難度A

グラフから、塩酸を50mL加えた時点で二酸化炭素の発生が止まっていることがわかります。

よって、重曹4.2gとちょうど反応する塩酸の体積は、50mLとわかります。

答え 50mL

(3)

面白さ☆  難度A

重曹の重さが、8.4÷4.2=2(倍) になっているので、

ちょうど反応する塩酸の体積、そのとき発生する二酸化炭素の体積は、

ともに最初の実験の2倍になります。

あてはまるグラフはイになります。

答え イ

〔3〕

面白さ☆☆  難度B

小学生にはあまりなじみのない「圧力」(単位面積あたりにはたらく力の大きさ)についての問題です。

物体A、B、Cがスポンジの中に沈みこむ深さは、スポンジの面が受ける圧力に比例します。

言いかえると、『物体と接するスポンジの面1㎠にかかる物体の重さ』に比例することになります。

ここでは、物体A、B、Cがスポンジの中に沈みこむ深さが同じなので、

物体A、B、Cと接するスポンジの面1㎠にかかる物体の重さはすべて等しいことがわかります。

よって、物体A、B、Cの質量(重さ)の比は、(あ)、(い)、(う)の面積に比例します。

(あ)、(い)、(う)の面積の比は、

60×30 : 20×30 : 60×20

= 1800 : 600 : 1200

= 3 : 1 : 2

なので、物体A、B、Cの質量(重さ)の比も、 3 : 1 : 2 になります。

答え 3:1:2

※「質量」という概念は小学生では学習しないので、

問題文中に用いられた「質量」という言葉で、

難しさが増したのではないでしょうか。

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