2008年 北嶺中学校 理科
『北嶺突破ゼミ』開講に合わせて、過去の北嶺入試で出題された難問や、
合否を分けた問題を解説しています。
本年度の第六回目は、2008年の理科大問5です。
化学分野からの出題ですが、さらに1つの大問がⅠ・Ⅱに分かれています。
Ⅰは物質の反応(イオン結合)を題材にした出題で、小学生には大変高度な内容です。
導入部分の説明を熟読して法則を見つけることができれば、何とか解答できそうですが、
見慣れない設定なのでとまどった受験生が多かったようです。
一方のⅡは水溶液の中和を題材に、金属の溶け方・水素の発生量についての典型的な出題でした。
最終問題をのぞけば難度も高くないので、是非とも完答したいところです。
Ⅰ・Ⅱともに、問題文の重要な箇所に印・下線をうちながら、
ていねいに読み進めることが正解への第一歩です。
最初に問題文を読むときの集中力の差が、正解か不正解かという結果に直結します。
本校の過去問演習を通して、実験結果をいい加減に読みとばしてすぐに設問に飛びつく傾向のある人は、
特に注意が必要です。
2015年度入試では、本問Ⅱのような中和の計算問題の出題の可能性が高いと予想されます。
練習を通して、典型的な解法の理解を進めましょう。
なお、問題は標準札幌校ホームページの北嶺中学過去入試問題からダウンロードできます。
大問5
Ⅰ
(1)
面白さ☆☆ 難度A
表1のあとの〔表の読み方〕の説明の中に、
「『○』がついている物質は、水によくとけて水溶液になります」
という記述があります。
表1で○のついた物質の数を数えれば、それが正解になります。
答え 15
(2)
面白さ☆☆☆ 難度B
表2のあとの説明(導入)を、しっかりと理解できるかどうかが勝負です。
例をあげて簡単に説明すると、次のようになります。
塩化ナトリウム水溶液と硝酸(しょうさん)鉛(なまり)水溶液を混ぜ合わせると、
とけている物質の名前の前半部分「塩化……」「硝酸……」と、
後半部分「……ナトリウム」「……鉛」の組み合わせが入れかわって、
「塩化鉛」と「硝酸ナトリウム」ができます。
表1で「塩化鉛」の場所を見ると「×白色」、「硝酸ナトリウム」の場所を見ると「○」とあるので、
この2つの水溶液を混ぜ合わせると、白色の沈殿(ちんでん)だけができることがわかります。
さて、塩化カルシウム水溶液と硝酸鉛水溶液を混ぜ合わせると、
「塩化鉛」=「×白色」と、「硝酸カルシウム」=「○」ができます。
よって、白色の塩化鉛が沈殿します。
答え 塩化鉛、白色
(3)
面白さ☆☆☆☆ 難度C
全部の組み合わせを試せば正解は見つかりますが、
その方法では試験時間内で正解を見つけるのは至難の業です。
「これは要するに、○○○ということだな」と問題文から法則を見抜いて、
自分の言葉で簡単に言い換えるという「要約の力」が求められます。
2種類の水溶液を混ぜ合わせると、
とけている物質の名前の前半部分と、後半部分の組み合わせが入れかわります。
表1でたての1列と横の1行がすべて○になっているところを見つければ、
その列と行が交わる場所が正解の水溶液になります。
たては「硝酸……」の1列、横は「……ナトリウム」の1行がすべて○なので、
正解は「硝酸ナトリウム」水溶液です。
答え 硝酸ナトリウム水溶液
(4)
面白さ☆☆☆ 難度B
(3)で「硝酸……」の1列はすべて○であることを確認しているので、
一方の水溶液が「硝酸……」であれば、最大でも1種類の沈殿しかできないことがわかります。
よって、消去法から正解はエとわかります。
一応、確かめておきます。
硫酸(りゅうさん)銀水溶液と塩化カルシウム水溶液を混ぜ合わせると、
「硫酸カルシウム」=「×白色」と,「塩化銀」=「×白色」の2種類の沈殿ができることがわかります。
答え エ
(5)
面白さ☆☆☆☆☆ 難度D
(1)から(4)までの問題で要領をつかんでいても、相当やっかいな問題です。
ねばり強く条件を整理する「分析する力」「試行する力」が要求されます。
まずは、【実験1】から考えます。
表1で青色の沈殿ができるのは「水酸化銅」だけなので、
このときの水溶液A、Bの組み合わせとしては、次の6通りの候補があります。
① 水酸化ナトリウム水溶液と塩化銅水溶液
② 水酸化ナトリウム水溶液と硫酸銅水溶液
③ 水酸化ナトリウム水溶液と硝酸銅水溶液
④ 水酸化カルシウム水溶液と塩化銅水溶液
⑤ 水酸化カルシウム水溶液と硫酸銅水溶液
⑥ 水酸化カルシウム水溶液と硝酸銅水溶液
このうち、⑤では「水酸化銅」以外にも、
「硝酸カルシウム」=「×白色」ができるので、当てはまりません。
次に、【実験2】を考えます。
黒色の沈殿ができるのは、「硫化(りゅうか)……」の1列だけなので、
水溶液B、Cの一方は、硫化ナトリウム水溶液か硫化カルシウム水溶液のどちらかだとわかります。
前述のように「……ナトリウム」の1行がすべて○なので、
水溶液B、Cの一方が硫化ナトリウム水溶液であれば、最大でも1種類の沈殿しかできません。
よって、B、Cの一方は硫化カルシウム水溶液だとわかります。
硫化カルシウム水溶液は【実験1】の水溶液A、Bの候補には登場していないので、
水溶液Cが硫化カルシウム水溶液です。
ここで、「……カルシウム」の行を見ると、白色の沈殿ができるのは硫酸カルシウムだけなので、
BとCを混合させてできる2種類の沈殿のうち、白い沈殿は「硫酸カルシウム」だとわかります。
この時点で水溶液Bは、硫酸銅水溶液か硫酸銀水溶液にしぼられますが、
硫酸銀水溶液は【実験1】の水溶液A、Bの候補には登場していないので、水溶液Bは硫酸銅水溶液です。
ここで、【実験1】の候補のうち、硫酸銅水溶液をふくむのは②と⑤ですが、
先に⑤が当てはまらないことがわかっているので、正しいのは②とわかります。
Aは水酸化ナトリウム水溶液、Bは硫酸銅水溶液、Cは硫化カルシウム水溶液だとわかりました。
答え A 水酸化ナトリウム水溶液、B 硫酸銅水溶液
Ⅱ
(1)
面白さ☆ 難度A
4×(2.72÷1.6)=6.8(g)
答え 6.8g
(2)
面白さ☆ 難度A
3.5%の塩酸75mLと、4.8%の水酸化ナトリウム水溶液75mLが中和します。
水酸化ナトリウム水溶液のこさが半分の2.4%になると、
とけている水酸化ナトリウムの量が半分になるので、
必要な水酸化ナトリウム水溶液の量は2倍になります。
75×2=150(mL)
答え 150mL
(3)
面白さ☆☆ 難度B
鉄粉4gがとけると、気体(水素)が1.6L発生します。
気体が2.4L発生しているので、
混合物中の鉄粉は、4×(2.4÷1.6)=6(g)、
銅は、8-6=2(g)です。
よって、重さの比は6:2=3:1となります。
答え 3:1
(4)
面白さ☆☆☆ 難度C
混合物中の銅は、まったくとけずにそのまま残るので、
鉄が8-2.9=5.1(g)とけたことがわかります。
鉄5.1gをとかすのに必要な3.5%の塩酸の量は、100×(5.1÷6.8)=75(mL)なので、
最初の塩酸100mLのうち、100-75=25(mL)が4.8%の水酸化ナトリウム水溶液と中和したことがわかります。
反応比は1:1なので、加えた水酸化ナトリウム水溶液は、25mLとわかります。
答え 25mL