2010年 北嶺中学校 理科
『北嶺突破ゼミ』開講に合わせて、過去の北嶺入試で出題された難問や、
合否を分けた問題を解説しています。
本年度の第四回目は、2010年の理科大問3・4です。
大問3は基本的な知識だけでなく、地軸(じく)のかたむきが変わったときの「変化」を考える力が要求される問題です。
難度はやや高めです。
大問4の前半の「ふり子」の問題は、同様の問題に慣れていて基本の法則を理解している受験生にとっては、
易しかったでしょう。
一方、大問4の後半の題材は、高校物理で学習する「単振動」(本問では「ばねふり子」)でした。
実験結果から法則を読み取っていくのですが、設問の内容は小学6年生にとっては、かなり高度なものでした。
全問正解できた受験生は、かなり少なかったと思われます。
「天体」「ふり子」はともに、2015年度入試でも出題の可能性が高い分野です。
特に「天体の運動」については、単なる知識だけではなく、「なぜそうなるのか」というところまで、
一歩ふみこんだ学習が大切です。
なお、問題は、標準札幌校ホームページの北嶺中学過去入試問題からダウンロードできます。
大問3
(1)
面白さ☆ 難度A
「地球が太陽に向かってお辞儀(じぎ)おじぎしているのが夏(夏至)」と覚えます。
地軸の北極側の端が、太陽に向かってかたむいている左側の地球が夏至(6月)です。
夏至から反時計回りに、秋分(9月)、冬至(12月)、春分(3月)となります。
答え カ
(2)
面白さ☆☆ 難度A
昼の長さは、17時13分-6時24分=10時間49分です。
昼の長さが12時間よりも短いので、
この日は、秋分(9月23日ごろ)から、春分(3月21日ごろ)までの間とわかります。
答え ア
(3)
面白さ☆ 難度A
日本が冬至の日には、太陽は南緯23.4度(本問の設定では90-67=23度)の地点の真上を通ります。
答え ク
(4)
面白さ☆☆ 難度B
「90度の地球」になったとすると、太陽は1年を通して、赤道の真上を通ります。
つまり、1年を通して、春分・秋分と同じ太陽の動きになります。
2月20日ごろと、3月21日ごろをくらべると、3月の方が昼の時間が長くなるので、
「日の出」の時間は早く、「日の入り」の時間はおそくなります。
答え ア
(5)
面白さ☆☆ 難度B
(4)で説明したように、1年を通して、春分・秋分と同じような気候が続きます。
答え オ
(6)
面白さ☆☆ 難度B
太陽の南中高度の公式を確認しておきましょう。
春分・秋分、夏至、冬至の日の太陽の南中高度は、次の公式で求められます。
春分・秋分 90度-(その地点の緯度)
夏至 90度-(その地点の緯度)+23.4度
冬至 90度-(その地点の緯度)-23.4度
ただし、本問の設定では、上の式の23.4という数字は、23になります。
ここでは、春分・秋分の太陽の南中高度を求めればよいので、南中高度は1年を通して、
90度-43度=47度で変化しません。
答え 下のグラフの太線
(7)
面白さ☆☆☆ 難度C
図があたえられているので、図を見て考えましょう。
赤道上では1日中、太陽高度が0度となり、太陽は地平線上にあります。
ただし、赤道上では北極の方が北、南極の方が南になるので、
太陽は1日中、真南の地平線付近にあることになります。
春分・秋分の日の北極や南極では、太陽は地平線にそって1周します。
そのことをイメージして、「ウ」と答えてまちがわないように要注意です。
答え オ
大問5
(1)
面白さ☆ 難度A
実験結果がていねいな導入になっていますが、
ふり子の基本的な法則は、知識として覚えておきましょう。
ふり子の周期は、ふりこ(糸)の長さだけで決まります。
答え ウ
(2)
面白さ☆☆ 難度B
「もどってくるまでの時間×もどってくるまでの時間」という設定に、とまどうかもしれません。
表1で、糸の長さが25㎝のときと100㎝のときをくらべると、
糸の長さが、100÷25=4(倍)になると、「もどってくるまでの時間×もどってくるまでの時間」も、
4÷1=4(倍)になっていることがわかります。
つまり、糸の長さが□倍になると、「もどってくるまでの時間×もどってくるまでの時間」も□倍になり、
この2つは正比例の関係にあることがわかります。
「ふり子の周期を□倍にするには、振り子の長さを□×□倍にすればよい」
という知識は、ほとんどの受験生が知っていたと思いますが、
問題の設定を正確に把握して、正比例の関係を導くのがポイントです。
答え 下のグラフ
(3)
面白さ☆ 難度A
糸の長さが25㎝のときとくらべると、もどってくるまでの時間が、3÷1=3(倍)になります。
糸の長さは25×3×3=225(㎝)です。
答え 225㎝
(4)
面白さ☆☆☆☆ 難度C
実験5と実験6から、おもりを引き下げる長さが変わっても、
周期(おもりが元の位置にもどってくるまでの時間)が変化しないことは、すぐにわかります。
ここからは、1.41や1.73という数字の意味を考えましょう。
本問では、1.41は2の平方根、1.73は3の平方根として、数値があたえられています。
つまり、
1.41×1.41=1.9881≒2
1.73×1.73=2.9929≒3
ということです。
この関係に気がつけば、次の法則を導くことができます。
「もどってくるまでの時間を□倍にするには、おもりの重さを□×□倍にすればよい」
ここでは、おもりの重さが100㎝のときとくらべると、
もどってくるまでの時間が、2.5÷1=2.5(倍)になります。
糸の長さは、100×2.5×2.5=625(㎝)になります。
答え 625㎝
(5)
面白さ☆☆☆☆ 難度D
(4)と同様に考えると、実験8から次の法則を導くことができます。
「もどってくるまでの時間を□倍にするには、ばねの本数を□×□倍にすればよい」
ただし、表中にばねの本数が4本の場合が示されているので、
法則を用いなくても正解にたどり着くことが可能です。
まず、おもりの重さが100gで、ばねの本数が4本のときは、もどってくるまでの時間は2秒です。
ここから、おもりの重さが300÷100=3(倍)になるので、
もどってくるまでの時間は2×1.73=3.46(秒)になります。
答え 3.46秒
(6)
面白さ☆☆☆☆☆ 難度D
合格必修シリーズ(標準グループのテキスト)にもあるように、
糸のふり子のおもりが動くのは、
糸の張力(糸がおもりを引く力)と、おもりにかかる重力(地球がおもりを引く力)の2つの力の働きによります。
無重力空間では、おもりにかかる重力はゼロなので、おもりは静止したままで動きません。
次に、ばねのふり子ですが、
実験の結果をふまえても、小学6年生が結果を予測するのはかなり難しいです。
結論から言うと、ばねのふり子は、無重力空間でも地球上と同じ動きをします。
物体の「質量」というのは、無重力空間でも存在します。
ばねの復元力は無重力空間でも変わらないので、
おもりを引き下げたときに元の位置にもどるまでの時間は、おもりの質量によって決まります。
少し難しくなりますが、
「おもりに働く重力の大小によって、おもりがつり合う位置は変わるが、
そこからのおもりの高さの変異に対する復元力は変わらないので、
おもりの質量が同じであれば、ふり子の周期は同じになる」
ということです。
ちなみに、宇宙ステーションで働く宇宙飛行士の健康管理のために体重の測定は欠かせませんが、
無重力空間ではふつうの体重計は使えません。
そのため、ステーション内では、ばねのふり子を利用した体重計で、ふり子の周期から体重を測定しています。
答え 糸のふり子 ア ばねのふり子 ウ