2013年 灘中学校 算数(1)

今回は全国最難関校の1つである灘中学校の入試問題から、算数1日目を解説します。

本校の入試は2日間にわたっておこなわれ、

1日目に国語(40分・80点)、算数(60分・100点)、理科(60分・100点)、

2日目に国語(70分・120点)、算数(60分・100点)の試験が実施されます。

全国でも数少ない2日間入試で、ボリューム・難度ともに最高峰の問題です。

2013年度入試での算数1日目の結果は、

受験者平均が45.0点、合格者平均点が58.6点でした。

昨年度に比べて受験者平均・合格者平均点ともに約21点の下降となり、大幅に難化しました。

算数1日目は例年、単問形式の小問ばかりが出題され、2013年度の総解答数は15題でした。

1題あたりの平均解答時間は4分と短く難度も相当に高いため、

“解く問題”と“捨てる問題”の取捨選択が合否のカギを握ります。

高度な計算力と処理のスピードも要求されるため、本当の意味での『実力勝負』といえるでしょう。

今回は、非常に灘らしい問題を、文章題・数の性質・平面図形の分野から1題ずつ取り上げます。

難度は高いですが、一読しただけで“捨てる問題”と決めつけてしまうには惜しい問題ばかりです。


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難度C 面白さ☆☆☆☆

いろいろなアプローチが考えられる問題ですが、

いずれにしても「不定方程式」 (一般に文字の数より式の数が少ない方程式のこと。

文字の整数条件などを利用して解く) の解法になります。

このような「不定方程式」タイプの問題を解く際に、非常に役立つテクニックをご紹介しましょう。

ポイントは、どれか1種類の金額を「0円」にしてしまうことです。

ここでは、1個の値段180円を0円とします。

わかりにくいので、例を用いて説明しましょう。

1日の終わりに店員さんが売り上げを計算するとします。

和菓子が全部で107個売れているので、とりあえずすべて1個180円で売れたとして、

180×107=19260(円)という売り上げを考えます。

ここから箱詰めが1箱売れるごとに、総売り上げは、1900-180×10=100(円)増えます。

また、袋詰めが1袋売れるごとに、総売り上げは、180×3-500=40(円)減ります。

箱詰めが□箱、袋詰めが△袋売れたとすると、総売り上げは、

19260+100×□-40×△(円)

と計算することができるわけです。

ここでは、19260+100×□-40×△=19900、19900=19260=640 より、

100×□-40×△=640 となります。

19900÷1900=10あまり900より、□の範囲が0~10であることから、

□=8、△=4 という答えが、比較的容易に導き出せます。

答え 4


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難度D 面白さ☆☆☆☆☆

高度な数の感覚はもちろん、式を立てて整理・類推する能力が要求されます。

まず、3桁の整数A0Bを式で表すと、100×A+B となります。

次に、2桁の整数ABを同様に式で表すと、10×A+B となります。

A0BがABで割り切れるので当然、A0BとABの差もABで割り切れます。

よって、A0B-AB=(100×A+B)-(10×A+B)=90×A がABで割り切れることになります。

※実はここで「A0BとABの差をとる」ことが、

この問題を比較的短時間で解くための最大のポイントです。

ここから、

90×A がABで割り切れる

→ 90×AがABの倍数である

→ ABは90×Aの約数である

という順に考えを進めます。

Aの値で場合分けして考えると、

A=1のとき、ABは十の位が1である90の約数でB≠0 → AB=15、18

A=2のとき、ABは十の位が2である180の約数でB≠0 → ABにあてはまる数は存在しない。

A=3のとき、ABは十の位が3である270の約数でB≠0 → ABにあてはまる数は存在しない。

A=4のとき、ABは十の位が4である360の約数でB≠0 → AB=45

A=5のとき、ABは十の位が5である450の約数でB≠0 → ABにあてはまる数は存在しない。

A=6のとき、ABは十の位が6である540の約数でB≠0 → ABにあてはまる数は存在しない。

A=7のとき、ABは十の位が7である630の約数でB≠0 → ABにあてはまる数は存在しない。

A=8のとき、ABは十の位が8である720の約数でB≠0 → ABにあてはまる数は存在しない。

A=9のとき、ABは十の位が9である810の約数でB≠0 → ABにあてはまる数は存在しない。

ABの候補は一気に、15、18、45の3つにしぼられました。

あとは、CACBCがABで割り切れるという条件をつめるだけです。

C1C5C が 15で割り切れる

→ C1C5Cが5の倍数かつ3の倍数である

→ C1C5Cが5の倍数であるためには、C=5であるが、このとき、C1C5Cは3の倍数にはならない。

C1C8C が 18で割り切れる

→ C1C8Cが9の倍数かつ2の倍数である

→ C=6 のときに成り立つ。

C4C5C が 45で割り切れる

→ C4C5Cが5の倍数かつ9の倍数である

→ C1C5Cが5の倍数であるためには、C=5であるが、このとき、C1C5Cは9の倍数にはならない。

よって、CACBC としてあてはまる数は、61686 と求められました。

答え 61686


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難度①C ②D 面白さ☆☆☆☆☆

2013年度入試の算数で、「最も灘らしい」出題といえるかもしれません。

かくれた補助線を見つける能力が要求される難問です。

まず①では、あの有名な三角形を見つけましょう。

下のようにMから辺BCに垂直な直線を引き、BCとの交点をHとします。

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灘2013-1-11-2

すると、BM=MA、MHとACが平行なことから、MH:AC=1:2 となり、

MH=2.5㎝ とわかります。

ここで三角形MHDに注目すると、

DM:MH=2:1、角MHD=90°から、

三角形MHDは正三角形を半分にした形の三角形 (有名です!) となり、

角MDH=30°とわかります。

角ADC=180-90-15=75(°)なので、イの角の大きさは、

180-75-30=75(°)となります。

次の②は相当やっかいですが、やみくもに補助線を引くのではなく、

何がわかれば、BDの長さが求められるか」という視点で考えを進めましょう。

高さMHがわかっているので、三角形BDMの面積がわかればよい。

AM=BMより、三角形ADMの面積と三角形BDMの面積は等しいので、

三角形ADMの面積がわかればよい。

MDを底辺と考えると、AからMDに下した垂線 (AEとします) の長さがわかればよい。

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角ADC=角ADEなので、

三角形ADEは辺ADを折り目として三角形ADCを折り返した三角形となり、

AE=AC=5㎝とわかる。

これで正解への道筋が整いました。

三角形ADM=三角形BDM=5×5÷2=12.5(㎠)なので、

BD=12.5×2÷2.5=10(㎝)となります。

答え ① 75  ② 10

 

①の導入が絶妙に効いているのが、よくわかります。「さすが灘」という名作です。

せっかくなので、もう一つ「ひらめき」型の別解をご紹介します。

下のように、Aを通ってMDに平行な直線を引き、辺BCの延長との交点をFとします。

すると、MD:AF=1:2より、AF=10(㎝)です。

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ここで、角FAD=角FDA=75(°)となることから、FD=FA=10㎝ となります。

BM=MA、MDとAFが平行なことから、BD=DFなので、BD=10㎝ とわかります。


次回は、2013年 灘中学校2日目「面白い問題の解法」を

掲載します。

 

 

 

たかおさまよりお便りをいただきました。on 2013年10月24日

私は灘中学は断念しましたが東大には入れました。問題2の後半部分の解説が省略されていましたので投稿します。
100×□-40×△=640の式より△+16が5の倍数になるために、△は4, 9にしぼられ、△が9では総個数が多すぎるので△=4であるという解法が一番速いと思いますがいかがでしょうか。

標準札幌校からのご返答でございます。

たかお 様

コメントを頂き、大変有難うございます。

解説の意図は、

100×□-40×△=640 の式を導いたあとは、

□の範囲が0~10であり、
さらに100×□≧640から□=7,8,9,10であることから、

□=7のとき、40×△=60 より、△=1.5(不適)
□=8のとき、40×△=160 より、△=4(適)
□=9のとき、40×△=260 より、△=6.5(不適)
□=10のとき、40×△=360 より、△=9 
ただし、このときは総個数が107個を超えるので不適

というものでしたが、確かに

100×□-40×△=640 の式の両辺を40で割って、
2.5×□-△=16
△+16=2.5×□ から、△+16 が5の倍数とした方が
試行回数は少なくなりますね。

大変参考になりました。

今後とも、わかりやすい解説を心がけたいと思いますので、
宜しくお願いいたします。

標準札幌校

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