2017年 北嶺中学校 理科(2)
今回は,大問2を取り上げます。
大問2は,生物分野から,消化と吸収・内臓器官の機能などのヒトの体のはたらきと,
顕微鏡の倍率についての問題でした。
なお、問題は標準札幌校ホームページの北嶺中学過去入試問題からダウンロードできます。
大問2
(1)
面白さ☆☆ 難度A
それぞれの消化液には,食物中の栄養分を分解する消化酵素がふくまれていて,
それぞれの消化酵素によって,分解する栄養素の種類が決まっています。
だ液せんで作られるだ液は,デンプンを分解します。
胃で作られる胃液は,たんぱく質を分解します。
すい臓で作られるすい液は,デンプン,たんぱく質,しぼうの3大栄養素すべてを分解します。
肝臓で作られて胆のうにたくわえられる胆汁には,消化酵素がふくまれていません。
胆汁にはしぼうのつぶを細かくして,水分と混ざりやすくする働きがあります。
小腸で作られる腸液には,
だ液やすい液によってデンプンが分解されてできた糖類を最終的に分解して,
吸収可能なブドウ糖にする働きと,
胃液やすい液によってたんぱく質が分解されてできたペプチド類を最終的に分解して,
吸収可能なアミノ酸にする働きがあります。
なお,十二指腸は小腸の最初の部分で,長さは25㎝ほどです。
十二指腸には消化液を出すあなが開いていて,ここからすい液と胆汁が出されます。
おもな栄養素に働く消化液は,次のように覚えておきましょう。
デンプン・・・だ液,すい液
たんぱく質・・・胃液,すい液
しぼう・・・すい液,胆汁(ただし,胆汁には消化酵素はふくまれていない)
答え ア・カ
(2)
面白さ☆☆ 難度A
小腸と肝臓は,「門脈」という血管で直接結ばれていて,
門脈から肝臓に流れこむ血液には,小腸で吸収された栄養分がふくまれています。
食物中のデンプンは,最終的にブドウ糖に分解されて小腸で吸収されますが,
ブドウ糖は単独ではエネルギーになりません。
すい臓から出される「インスリン」というホルモンの働きによって細ぼうの中へ取りこまれ,
初めてエネルギーとして利用したり,たくわえたりできるのです。
食事によって上昇した血糖量に応じて,すい臓からインスリンが出されます。
インスリンは肝臓へと運ばれて,ブドウ糖を「グリコーゲン」という物質にかえて,
細胞の中へ取りこむ働きをしています。
インスリンがブドウ糖の使い道をうまくコントロールしているので,
食後に一時的に上昇した血糖量も数時間後には食前の値まで下がります。
すい臓から出されるインスリンの量が少なくなったり,
インスリンがうまく働かずに,血糖量の調節がきかなくなるのが「糖尿病」とよばれる病気です。
答え エ
(3)
面白さ☆☆ 難度A
ヒトをふくめたほ乳類や鳥類の心臓は,
右心房,左心房,右心室,左心室という4つの部屋に分かれています。
この4つの部屋は,それぞれ独立して収縮をするのではなく,
心臓の上部にある右心房と左心房,心臓の下部にある右心室と左心室が,
それぞれ同時に収縮をします。
大静脈から送られた血液が右心房に,肺静脈から送られた血液が左心房にたまると,
まず,右心房と左心房が同時に収縮して,たまった血液を右心室と左心室に送ります。
次に,右心室と左心室が同時に収縮して,右心室の血液を肺動脈に,左心室の血液を大動脈に送ります。
答え ア
(4)
面白さ☆☆ 難度B
腎臓の働きが正常時の10%以下になると,
血液のろ過が十分に行えず,水分や不要物の調節ができなくなってしまいます。
そのような場合に,人工的に血液をきれいにする治療法が「人工透析」です。
人工透析では,血液透析器を通して,血液を体内から取り出し,
血液中の余分な水分や不要物を取りのぞき,きれいになった血液を体内にもどします。
また,他の選択肢が問題文中の説明に当てはまらないことがわかれば,消去法で正解できるでしょう。
答え キ
(5)
面白さ☆☆ 難度A
顕微鏡の倍率は,(接眼レンズの倍率)×(対物レンズの倍率)で求めることができます。
ただし,ここでいう「倍率」とは,視野に写る像の「面積」ではなく,
「長さ」が基準になっていることに,注意が必要です。
算数の相似の単元で学習する「相似比」や,地図の「縮尺」なども,すべて「長さ」が基準になっています。
そのため,
倍率が2倍になると,視野に写る像の面積はもとの面積の,2×2=4(倍)になり,
倍率が3倍になると,視野に写る像の面積はもとの面積の,3×3=9(倍)になります。
ここでは,視野に写る像の面積が最初の16倍になっているので,
16=4×4より,倍率が最初の4倍になっていることがわかります。
接眼レンズの倍率は変わっていないので,
対物レンズの倍率が,最初の倍率の4倍,すなわち,10×4=40(倍)になっています。
答え 40倍