2018年 北嶺中学校 理科(2)
今回は,大問3・4を解説します。
大問3は中和についての出題で,後半は計算して答えを出す問題でした。
典型的な出題ばかりとはいえ,『中和に関する計算問題』は,
特に苦手にしている受験生が多い分野なので,
要領よく計算して確実に正解を出し切るためには,かなりの習熟度が要求されます。
大問4は遺伝についての出題でしたが,高等学校過程の生物で学習する遺伝の法則,
いわゆる『メンデルの法則』に関係する内容がふくまれています。
特に,(4)以降の問題は,遺伝についての法則性を読み取って計算する問題で,
かなりの難問でした。
なお,問題は標準札幌校ホームページの北嶺中学過去入試問題からダウンロードできます。
大問3
(1) 面白さ☆ 難度A
ア・イ
水に何かをとかして水溶液にすると,ふっとうする温度(ふっ点)は100℃よりも高くなり,
こおる温度(ぎょう固点)は0℃よりも低くなります。
つまり,液体である温度のはばが広くなります。
このことは,水に塩を加えて野菜などをゆでると短時間でゆであがることや,
真水にくらべて海水のほうがこおりにくいことでもわかります。
ウ・エ
ミョウバンは固体で,水の温度が高いほどよくとけます。
また,その水溶液は弱い酸性を示します。
酸性やアルカリ性の水溶液は,程度の差こそありますが,すべて電流を通します。
オ
気体である二酸化炭素は,水の温度が低いほどよくとけます。
ア~エの正誤に自信がなくても,
「気体は水の温度が低いほどよくとける」という知識を知っていれば,
正解できます。
答え オ
(2) 面白さ☆☆ 難度A
二酸化炭素が水にとけた炭酸水が酸性の水溶液であることは,ほとんどの受験生が知っているので,
カを選ぶのは簡単です。
もう一つの答えを選ぶには,問題文中の
『石油や石炭などを燃やしたときに排出される煙には,
硫黄や窒素を成分とする気体がふくまれます。
そのような気体は水に溶けると,強い酸性の水溶液になります。
これが酸性雨の原因と考えられています』
という記述が大きなヒントになります。
選択肢のキに「二酸化硫黄」とあるので,これが「硫黄を成分とする気体」であることは,
想像できます。
答え カ と キ
(3) 面白さ☆☆ 難度A
次にあげる3つの反応が,中学入試で取り上げられる代表的な中和反応の例です。
・塩酸と水酸化ナトリウム水溶液をまぜると,中和して食塩水ができる。
・石灰水に二酸化炭素を通すと,
中和して白いにごり(水にとけない炭酸カルシウムという物質)ができる。
・虫にさされたときに虫の毒(酸性)を中和するために,アンモニア水(アルカリ性)をふくんだ薬をぬる。
したがって,正解はウです。
答え ウ
(4) 面白さ☆☆ 難度A
表中の「残った固体の重さ」の差に注目すると,
加える水酸化ナトリウム水溶液の体積が20mLまでは,加える量が5mL増すごとに,
残った固体の重さが1gずつ増加しています。
また,加える水酸化ナトリウム水溶液の体積が20mLをこえると,
加える量が5mL増すごとに,残った固体の重さが0.7gずつ増加しています。
グラフからも,加える水酸化ナトリウム水溶液の体積が20mLのところをさかいにして,
グラフのかたむきが変化していることがわかります。
このことから,
①
塩酸10mLと過不足なく中和する(完全中和する)水酸化ナトリウム水溶液は20mLで,
このときの中和で食塩が4gできる
ことがわかります。
塩酸と水酸化ナトリウム水溶液が完全中和した後も,さらに水酸化ナトリウム水溶液を加えていくと,
よぶんに加えた水酸化ナトリウム水溶液にとけている固体の水酸化ナトリウムの重さの分だけ,
残った固体の重さが増えていきます。
このことから,
②
水酸化ナトリウム水溶液30-20=10(mL)あたり,5.4-4=1.4(g)の水酸化ナトリウムがとけている
ことがわかります。
下線部①から,塩酸20mLと過不足なく中和する水酸化ナトリウム水溶液は,
20×(20÷10)=40 mLであることがわかります。
したがって,加える水酸化ナトリウム水溶液が20mLのとき,
できた水溶液は酸性になり,BTB溶液を加えると黄色になります。
また,加える水酸化ナトリウム水溶液が40mLのとき,
できた水溶液は中性になり,BTB溶液を加えると緑色になります。
答え 20mL イ 40mL ア
(5) 面白さ☆☆☆ 難度B
(4)の下線部①から考えます。
加える水酸化ナトリウム水溶液が20mLのとき,
実際に中和するのは,塩酸10 mLと水酸化ナトリウム水溶液20mLです。
したがって,食塩が4g残ります。
加える水酸化ナトリウム水溶液が40mLのとき,
塩酸20mLと水酸化ナトリウム水溶液40mLが過不足なく中和するので,
食塩が,4×(20÷10)=8(g)残ります。
答え 20mL 4g 40mL 8g
(6) 面白さ☆☆☆ 難度B
【実験】で用いた塩酸を1.5倍の濃(こ)さにしたもの20mLを,もとの塩酸に置きかえると,
20×1.5=30(mL)に相当します。
(4)の下線部①から,
もとの塩酸30mLと過不足なく中和する水酸化ナトリウム水溶液は,20×(30÷10)=60(mL)です。
この中和で,食塩が,4×(30÷10)=12(g)できます。
このとき,水酸化ナトリウム水溶液が,70-60=10(mL)残ります。
(4)の下線部②から,この水酸化ナトリウム水溶液10mLにとけている水酸化ナトリウムは,1.4gです。
したがって,ビーカーに残る固体の重さは,12+1.4=13.4(g)です。
答え 13.4g
(7) 面白さ☆☆☆ 難度B
【実験】で用いた水酸化ナトリウム水溶液を4倍の濃さにしたもの100mLを,
もとの水酸化ナトリウム水溶液に置きかえると,100×4=400(mL)に相当します。
したがって,本問では,もとの塩酸30mLと,もとの水酸化ナトリウム水溶液400mLを
まぜ合わせたときに残る固体の重さを考えます。
(6)から,もとの塩酸30mLと過不足なく中和するもとの水酸化ナトリウム水溶液は60mLで,
この中和で,食塩が12gできることがわかっています。
このとき,もとの水酸化ナトリウム水溶液が,400-60=340(mL)残ります。
(4)の下線部②から,もとの水酸化ナトリウム水溶液340mLにとけている水酸化ナトリウムは,
1.4×(340÷10)=47.6(g)です。
したがって,ビーカーに残る固体の重さは,12+47.6=59.6(g)です。
答え 59.6g
大問4
(1) 面白さ☆☆ 難度A
生物が生きていくために必要な遺伝情報の1組を「ゲノム」といいます。
近年は,各国の研究機関が協力して,人間をはじめ,さまざまな動物の遺伝情報を解読する
「ゲノムプロジェクト」が進行しています。
また,iPS細胞を作り出すことに成功した京都大学iPS研究所所長の
山中伸弥(やまなか しんや)教授は,2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
答え a ゲノム b iPS c やまなかしんや
(2) 面白さ☆☆ 難度A
ア~ウはすべて,シカが増える原因になります。
エのように積雪量が増えると,冬眠しないシカは冬の間の食料を探すのが困難になり,
生存率が低くなります。
答え エ
(3) 面白さ☆☆☆ 難度A
問題文中にも書かれているように,
人は,選抜育種によって,家畜として飼うときに人にとって都合のよい動物になるように,
イノシシからブタを誕生させました。
ア~エの中で,人にとって都合のよい条件は,ブタが一度に多くの子を産んでくれることです。
なぜなら,短期間のうちに飼育するブタの数を増やせますし,
食肉に回すブタの数が増えれば,それだけ収入も増加するからです。
したがって,アが正解です。
答え ア
ここからは,ほとんどの受験生にとって解き慣れない問題ばかりです。
まず,落ち着いて問題文を読んで,正確に問題の条件を理解することが肝心です。
その上で,「正解にたどりつくための手順」を考えて,要領よく処理する必要があります。
(4) 面白さ☆☆☆☆ 難度B
次のように,表1と同様の表を書いて考えると,生まれてくる子のうち,
「大きくなる子」(AAまたはAa)が3マス,
「大きくならない子」(aa)が1マスになるので,
数の比は3:1になります。
答え 3:1
(5) 面白さ☆☆☆☆☆ 難度C
第一世代の「大きくなる子」の集団で,AA:Aa=3:2であることから,
親の欄にAAのマスを3つ,Aaのマスを2つずつ用意して,
表1・2と同じような表を完成する方法があります。
実際の表は次のようになります。生まれてくる子のマスは全部で,10×10=100(マス)できます。
このうち,「大きくならない子」(aa)が斜線部の4マス,
「大きくなる子」(AAまたはAa)が,100-4=96(マス)になるので,
第二世代の「大きくなる子」:「大きくならない子」=96:4=24:1です。
また,第二世代の「大きくなる子」のうち,
Aaのマスは太線で囲んだ7×4+4=32(マス),AAのマスは,96-32=64(マス)になるので,
AA:Aa=64:32=2:1です。
したがって,正解は,dがケ,eがイになります。
実際に合計100マス分を書き出すのは大変です。
工夫して,次のように簡便化した表を用いて考えるとよいでしょう。
答え d ケ e イ
(6) 面白さ☆☆☆☆☆ 難度C
第二世代の「大きくなる子」の集団で,AA:Aa=2:1であることから,
(5)と同じような表を用いて考えます。
「大きくなる子」(AAまたはAa)のうち,AAは25,Aaは5×2=10になるので,
AA:Aa=25:10=5:2となり,第三世代の「大きくなる子」の中でのAAの割合は,
5÷(5+2)×100=71(%)です。
答え 71%
(7) 面白さ☆☆☆☆☆ 難度C
第三世代の「大きくなる子」の集団で,AA:Aa=5:2であることから,
(5)(6)と同じような表を用いて考えます。
「大きくなる子」(AAまたはAa)のうち,AAは144,Aaは24×2=48になるので,
第四世代の「大きくなる子」の中でのAaの割合は,48÷(144+48)×100=25(%)です。
各世代の「大きくなる子」の中でのAaの割合をまとめると,次のようになります。
親世代・・・AA:Aa=1:1,Aaの割合は,1÷(1+1)×100=50(%)
第一世代・・・AA:Aa=3:2,Aaの割合は,2÷(3+2)×100=40(%)
第二世代・・・AA:Aa=2:1,Aaの割合は,1÷(2+1)×100≒33(%)
第三世代・・・AAの割合が71%なので,Aaの割合は,100-71=29(%)
第四世代・・・Aaの割合は,25(%)
したがって,グラフは次のようになります。