2018年 北嶺中学校 理科(1)
本年度入試では,昨年度までの50点満点から80点満点へと配点が変更になりました。
制限時間は40分で変更ありません。
出題形式も例年通りで,大問は4問,小問総数は昨年から少し増えて35問(2017年は30問)でした。
受験者平均は41.9点(得点率52.4%,2017年47.2%,2016年73.0%,2015年51.4%),
合格者平均は47.4点(得点率59.3%,2017年52.6%,2016年81.6%,2015年63.4%)でした。
受験者平均,合格者平均ともに50%台を記録し,本校の入試問題としては標準的な難度の出題となりました。
本年度の大問1は地学分野,大問2は物理分野から,どちらも単問形式で出題されました。
また,大問3は化学分野,大問4は生物分野の出題でした。
難易度は,暗記分野では比較的平易な出題が多く,計算分野でやや難度が高い出題が多いというのが,
北嶺中学校の例年の出題傾向です。
本年度は大問4の生物分野で,
遺伝子の顕性,潜性についての法則性を考えさせる難度の高い出題が見られました。
2009年度に出題された「ABO式血液型」の問題をさらに発展させたものです。
高等学校過程の生物で学習する遺伝の法則,いわゆる『メンデルの法則』に関する出題でしたから,
小学生には相当難しかったと思われます。
それ以外の出題では目立った難問は見られませんでした。
最高難度の遺伝子に関する問題の出題順が全体の最後ということもあって,
ほとんどの受験生にとっては,比較的取り組みやすい問題構成だったと思われます。
ただし,理科の暗記事項は,「なぜそうなるのか」という仕組みを理解した上で覚えておくことが肝心です。
単なる「棒暗記」の知識で入試本番に臨むと,本番の入試で少し目先を変えて出題されたときに対応できずに,
思わぬ低得点になってしまう例が目立ちます。
暗記分野と基本的な計算問題で確実に得点できれば,
最後の遺伝子の問題を落としても,合格者平均レベルの得点をとることは十分に可能です。
2018年度の出題内容は,次の通りです。
大問1 地学問題 地震(じしん)のゆれ・川の流れ・季節と天体の動き・太陽系のわく星・月食の見え方
大問2 物理分野 かん電池と豆電球・てこのつり合い・ふりこの動き・はりあな写真機
大問3 化学分野 水溶液の性質(中和に関する計算問題)
大問4 生物分野 遺伝のしくみ(メンデルの法則)
今回は,大問1・2を解説します。
なお,問題は標準札幌校ホームページの北嶺中学過去入試問題からダウンロードできます。
大問1
(1)① 面白さ☆ 難度A
地震が発生したとき,最初に起こる小さなゆれを「初期微動」,
しばらくたってから起こる大きなゆれを「主要動」といいます。
初期微動を伝えるP波は秒速約8㎞,主要動を伝えるS波は秒速約4㎞と地中を伝わる速さが異なるため,
ある地点でP波とQ波が伝わった時刻の差から,震源までの距離を求めることができます。
答え a しょきびどう b しゅようどう
(1)② 面白さ☆☆ 難度A
地震が発生した瞬間を基準に考えます。
震源からの距離が10㎞の地点にある地震計が初期微動(P波)をとらえるのは,
10÷8=1.25(秒後)です。
震源からの距離が50㎞の地点で緊急(きんきゅう)地震速報が発表されたのは,
1.25+3=4.25(秒後)です。
震源からの距離が50㎞の地点に主要動(S波)が伝わるのは,
50÷4=12.5(秒後)です。
したがって,震源からの距離が50㎞の地点で緊急地震速報が発表されてから,主要動が始まるまでの時間は,
12.5-4.25=8.25≒8.3(秒)です。
答え 8.3秒
(2) 面白さ☆ 難度A
蛇行した川のカーブの部分では,カーブの外側で土地をけずる浸食作用が大きくなり,
カーブの内側で土砂を積もらせる堆積作用が大きくなります。
そのため,時間の経過とともに川の蛇行が大きくなります。
蛇行が大きくなると,大雨などで川が増水したときに川の水がまっすぐに流れようとして,
流れる道すじが変わります。
このとき,取り残された部分が川から分かれて池となって残りますが,
この池を「三日月湖(河跡湖)」といいます。
日本では,北海道を流れる石狩川の中流から下流域に多くの三日月湖が見られます。
答え a しんしょく b たいせき c 三日月(河跡)
(3) 面白さ☆☆ 難度A
ア 北半球と南半球は季節が逆になるので,
北半球にある札幌が夏のとき,南半球にあるオークランドは冬です。
イ 北半球か南半球かに関係なく,太陽・月・星などの天体が上るときは,
東よりの地平線(水平線)から上り,これらの天体がしずむときには,
西よりの地平線(水平線)にしずみます。
これは地球が地軸のまわりを西から東の向きに自転しているからです。
ウ 台風やサイクロンは,低気圧が発達したものです。
低気圧の周辺では,低気圧の中心に向かって,回転しながら風が吹きこみます。
このときの風の向きは,北半球では反時計回り(左巻き),南半球では時計回り(右巻き)になります。
気象衛星の雲の動きを見ても,台風のうず巻きは北半球では必ず左巻きになっています。
南半球にいけば当然,右巻きになります。
エ 北半球と南半球では年間を通して見える星座が異なります。
例えば,北極星の高度は観測地点の北緯と同じになるので,
北緯43度に位置する札幌で北極星を見ると地平線から43度の高さに見えます。
北緯0度の赤道上では,北極星の高度は0度,つまり地平線ぎりぎりにあってほとんど見えません。
赤道よりも南にあるオークランドでは,北極星は常に地平線よりも下にあるので,
北極星をふくむこぐま座は見ることができません。
したがって,下線部がまちがっているものはイです。
ウやエの下線部の正誤に自信がなくても,イの下線部が明らかにまちがっているので,正解できるはずです。
答え イ
(4) 面白さ☆☆☆ 難度B
太陽系の内側から外側にかけてのわく星の並びは,ほとんどの受験生にとって常識でしょうが,
大きさの順番を正確に知っている受験生はかなり少なかったと思われます。
地球の直径を1とすると,他のわく星の平均直径は,小さいものから順に,
水星=0.38,火星=0.53,金星=0.95,天皇星=3.98,土星=9.14,木星=11.00となっています。
ちなみに,太陽=109.25,月=0.27です。
したがって,正解はアになります。
答え ア
(5) 面白さ☆☆ 難度A
月食は満月のときに,月が西(左)から東(右)に向かって地球のかげを横切るために,
月の一部または全部が暗くなる現象です。
エは,次の図のように,満月が地球のかげを横切って,地球のかげから完全に出る少し前の様子を表しています。
答え エ
大問2
(1) 面白さ☆☆ 難度A
かん電池が1個,豆電球が1個の最も単純な回路に流れる電流を1として,各回路に流れる電流を表すと,
次のようになります。
電池から流れる電流が大きいほど,豆電球が消えるまでの時間が短くなり,
電池から流れる電流が小さいほど,豆電球が消えるまでの時間が長くなります。
したがって,豆電球が消えるまでの時間が最も短い回路はオ,最も長い回路はカになります。
答え ① オ ② カ
(2) 面白さ☆☆ 難度A
おもりAの重さをagとすると,図1のてこで,左回りのモーメントと右回りのモーメントが等しいことから,
次のようにaが求められます。
a×30=3×20+6×(20+30)
a×30=360
a=360÷30=12
したがって,おもりAの重さは12gです。
次に,おもりB,Cの重さをそれぞれ,bg,cgとすると,
おもりB,Cを合わせた重さは,Aの重さと等しいので,b+c=12であることがわかります。
さらに,図2の下側のてこで,左回りのモーメントと右回りのモーメントが等しいことから,
次のようにbとcが求められます。
b×14=c×10より,
b:c=10:14=5:7
b=12×(5/12)=5
c=12×(7/12)=7
したがって,おもりBの重さは5g,おもりCの重さは7gです。
答え A 12g B 5g C 7g
(3) 面白さ☆☆ 難度B
ふりこをふくめた物体の運動では,次の法則をしっかり理解しておきましょう。
① ふり子の周期は,おもりの重さやふれはばに関係なく,ふりこの長さだけで決定する。
ふりこの長さが長いほど周期は長くなり,ふりこの長さが短いほど周期は短くなる。
② おもりの動きをさまたげるものがなければ,おもりは必ず,動き始めの位置と同じ高さまで動く。
③ おもりの速さは,おもりの重さに関係なく,動き始めの位置との高さの差だけで決定する。
動き始めの位置との高さの差が大きいほど速くなり,動き始めの位置との高さの差が小さいほどおそくなる。
動き始めの位置と同じ高さになったときは,速さが0(ゼロ)になり,いったん静止する。
上の法則のうち,①はほとんどの受験生が完璧に理解していると思いますが,
②,③の法則の理解が不十分な受験生にとっては「適するもの2つ」を完答するのは難しかったと思われます。
ア おもりがBを通るときに,動き始めの位置Aとの高さの差が最も大きくなるので,最も速くなります。
イ おもりは必ず,動き始めの位置Aと同じ高さまで動くので,Cでは折り返さず,そのまま運動を続けて,
Aと同じ高さになった地点で折り返します。
ウ おもりが折り返すところのBからの高さは,くぎがあるなしにかかわらず,動き始めの位置Aと同じ高さになります。
エ おもりの重さと速さには関係がありません。おもりの重さを2倍にしても,Bを通るときの速さは変化しません。
したがって,適するものは,アとウです。
答え ア と ウ
(4) 面白さ☆☆ 難度A
はりあな写真機の問題です。
穴を通る光の道筋は次の図のようになるので,
スクリーンに写る像の向きは,もとの板の向きと上下左右が反対になります。
したがって,正解はキになります。
答え キ