2015年 灘中学校 算数(1)
今回は全国最難関校の1つである灘中学校の入試問題から、算数1日目を解説します。
2015年度入試での算数1日目の結果は、受験者平均が41.9点、合格者平均点が54.4点でした。
昨年度に比べて受験者平均は約15点、合格者平均点は約19点の下降となり、著しく難化しました。
2012年度からの受験者平均は、66.5点 → 45.0点 → 57.2点 → 41.9点 と推移しており、
「難しい年」と「易しい年」が交互にくり返されています。
算数1日目は例年、単問形式の小問ばかりが出題され、2015年度の総解答数は16題でした。
制限時間が60分なので、1題あたりの平均解答時間は4分弱です。
小問とはいえ、他の中学校の入試では最終問題に相当するような良難問が並びます。
合格ラインの5割を突破するには、演習量に裏打ちされた正確な計算力、処理能力はもちろん、
“解くべき問題”と“捨てる問題”を取捨選択する能力も要求されます。
最難関校にふさわしい、非常に「タフ」な入試と言えるでしょう。
2015年度入試では、試験問題中盤の6・7の処理が合否の最大の分かれ目だったと思われます。
一定以上の難度の問題を解き慣れている受験生にとっても、
一読して解法をイメージするのが困難な、正真正銘の難問でした。
その一方で、後半の8・9・10・11・12(いずれも図形問題)は、
難関校レベルの図形問題をやりこんでいる受験生にとっては、比較的容易に解法が思いつく問題でした。
問題序盤の1・2・3を落ち着いて確実に処理し、
6・7を“捨てる問題”と見切って、後半の図形問題に時間をかけられれば、
合格ラインを突破する得点を取ることができたはずです。
今回は、本年度最難の6・7を解説します。
本番で正答するのは困難ですが、得るところの多い良問です。
来年度以降の灘中志望者は、ぜひとも6の①と7の解法を理解しておきましょう。
①
面白さ☆☆☆☆☆ 難度C
電卓を用いて、1/43を順に2倍、3倍、・・・・・・としていけば、いつかは正解にたどりつけますが、
試験時間内に筆算で処理するのは大変です。
1/43の小数点以下の数の並びを見ると、小数第15位が8、小数第16位が3になっています。
そこで、1/43を1000倍すれば、数の並びを変えずに、小数第12位が8、小数第13位が3になることがわかります。
1000/43=23と11/43なので、求める分子は11とわかります。
②
面白さ☆☆☆☆☆ 難度D
1/43の小数点以下の数の並びを見ると、小数第9位が3、小数第10位が9になっています。
21桁ごとに同じ数字がくり返すので、小数第30位が3、小数第31位が9になります。
そこで、1/43を10の18乗倍すれば、
数の並びを変えずに、小数第12位が3、小数第13位が9になることがわかります。
10の18乗を43で割るのは大変なので、
1/43を10の18乗倍した分数の小数点以下の数の並びを考えます。
1/43の小数第19位が小数第1位にくり上がってくるので、小数点以下の数の並びは次のようになります。
.0930232・・・・・・
この数の並びは必ず、1/43の小数点以下の数の並び 「.0232558・・・・・・」 の整数倍になります。
両方の数の並びを注意して見てみると、
「.0930232・・・・・・」 は、 「.0232558・・・・・・」の4倍になっていることがわかります。
よって、求める分子は4とわかります。
答え ①11 ②4
情報量が非常に多いので、整理するのが大変です。
難関校志望者にはおなじみの、ダイヤグラムを使った解法が威力を発揮します。
ダイヤグラムがかければ、①②を完答できるはずです。
①
面白さ☆☆☆☆ 難度D
列車Aと列車Bの速さの比は、 14:16 = 7:8 なので、
列車Aと列車Bが同じ距離を進むのにかかる時間の比は 8:7 になります。
列車Aの最後尾がトンネルに入ってから出るまでの時間を⑧、
列車Bの先頭がトンネルに入ってから出るまでの時間を⑦として、
列車A、Bがトンネルに入っている間のダイヤグラムをかくと、次のようになります。
ここで、三角形の相似から、 アイ:イエ = 11:109 、 アウ:ウエ = 7:8 = 56:64 とわかるので、
アイ:イウ:ウエ = 11:45:64 になります。
ダイヤグラムより、アイ=11の距離を列車A、Bが進む時間の合計が11秒なので、
ウエ=64の距離を列車A、Bが進む時間の合計は、64秒とわかります。
この64秒という時間は、列車Aの最後尾が、トンネルに入り始めてからトンネルを出るまでの時間でもあるので、
列車Aの先頭が、トンネルに入り始めてからトンネルを出るまでの時間も64秒になります。
②
面白さ☆☆☆☆ 難度D
①でかいたダイヤグラムで、⑧=64秒なので、①=64÷8=8(秒)になります。
⑦=8×7=56(秒)なので、列車Aの最後尾と列車Bの先頭が同時にトンネルを出たのは、
32+56=88(秒後)とわかります。
また、列車Aの最後尾がトンネルに入ったのは、88-64=24(秒後)です。
よって、列車Aの長さは、14×24=336(m)、列車Bの長さは、16×(109-88)=336(m)となり、
A、Bの車両同士が一部でも真横から見て重なるのは、
(336+336)÷(14+16)=22.4(秒間)とわかります。
答え ①64 ②22.4