2015年 開成中学校 算数
今回は、開成中学校の入試問題を取り上げます。
2015年度の大学入試では、東大185名、うち最難関の理Ⅲに14名の合格者を輩出しています。
東大合格者数は全国第1位、理Ⅲ合格者数も灘高校に次いで第2位の進学実績でした。
開成中学校の入試は、算数85点・国語85点・理科70点・社会70点の310点満点で実施され、
2015年度の合格最低点は、223点(得点率71.9%)でした。
近年の合格ラインは得点率70%前後で推移しており、
難関校の中でも極めて合格ラインの高い入試と言えます。
2015年度入試では、
募集者300人に対して受験者1171人、合格者395人で、
実質競争率は2.96倍でした。
開成中学校の算数は、基本的には大問4題構成(2010年・2013年は大問3題構成)です。
出題分野は、「数の性質」「速さ」「立体図形」の3分野から大問1題ずつが出題され、
それに「平面図形」「比と割合の文章題」「規則性」から大問1題が加わるのが基本の構成です。
2015年度入試も、基本通りの構成でした。
出題内容は、次の通りです。
大問1 分数の性質と演算記号
大問2 平面図形(複合図形)の求積
大問3 速さと周期
大問4 立体図形(図形の重なりと切断)
2015年度入試について、受験者平均は49.9点(得点率58.7%)、合格者平均は61.1点(同71.9%)でした。
今回は、後半の大問3は時間さえあれば確実に解ける問題、
大問4も最難関校志望者にとっては、何度も解いているはずの問題でした。
一方で、前半の大問1の(3)と大問2の(4)は難度の高い問題でした。
実際の入試では、この2問をとりあえず「捨て問」にして、
時間に余裕を持って後半の大問2題に進めた受験生は合格にぐっと近づいたはずです。
開成を含めた最難関校志望者には、制限時間内に問題の難易度を見定めて、
難度の高い問題については勇気を持って「捨てる」という判断力もみがいてほしいと思います。
今回は、平面図形に式の整理も合わさった、
新傾向かつ最もおもしろい大問2を取り上げて解説します。
(1)
面白さ☆☆ 難度A
カの面積は、中心角60度のおうぎ形の面積(オ×2)から、正三角形エの面積を引けば求められます。
この問題自体は簡単ですが、 [カ] = [オ]×2-[エ]×1 という式は、(2)以降の小問を解くのに大活躍します。
答え サ=2
(2)
面白さ☆☆☆ 難度B
次のように補助線を引くと、アの面積+イの面積は、
カの面積×2+中心角30度のおうぎ形の面積(オ×1) で求められることがわかります。
よって、
[ア]+[イ]
= [カ]×2+[オ]
= ([オ]×2-[エ]×1)×2+[オ]×1
= [オ]×5-[エ]×2
答え シ=5、ス=2
(3)
面白さ☆☆☆☆ 難度C
図から、 [イ]+[ウ] = [オ]-[カ] であることがわかります。
この式を変形して、 [イ]+[ウ]+[カ] = [オ] とします。
ここで、[カ]に(1)で求めた [カ] = [オ]×2-[エ]×1 という式を「代入」します。
すると、 [イ]+[ウ]+[オ]×2-[エ]×1 = [オ] となり、さらに変形すると、
[イ]+[ウ]+[オ] = [エ] となります。
答え セ=[エ]
(4)
面白さ☆☆☆☆☆ 難度D
図から、 [ア] = [キ]×1-([イ]+[ウ])×4 であることがわかります。
ここで、(3)より [イ]+[ウ] = [エ]-[オ] であるので、上の式にこの式を「代入」して、
[ア]
= [キ]×1-([エ]-[オ])×4
= [キ]×1+[オ]×4-[エ]×4
[イ]は、(2)で求めた式 [ア]+[イ] = [オ]×5-[エ]×2 と
上で求めた式 [ア] = [キ]×1+[オ]×4-[エ]×4 を合わせて考えます。
[イ]
= [オ]×5-[エ]×2-[ア]
= [オ]×5-[エ]×2-([キ]×1+[オ]×4-[エ]×4)
= [オ]×5-[エ]×2-[キ]×1-[オ]×4+[エ]×4
= [エ]×2+[オ]×1-[キ]×1
[ウ]は、式の変形を用いなくても、図からすぐにわかります。
[ウ] = [キ]×1-[エ]×1-[オ]×2
※
上のように、 [ウ] = [キ]×1-[エ]×1-[オ]×2 の式はすぐに求められるので、
(3)で求めた [イ]+[ウ]+[オ] = [エ] の式と、この式を合わせて考えて、
[イ]
= [エ]-[ウ]-[オ]
= [エ]×1-([キ]×1-[エ]×1-[オ]×2)-[オ]×1
= [エ]×1-[キ]×1+[エ]×1+[オ]×2-[オ]×1
= [エ]×2+[オ]×1-[キ]×1
としてもよいでしょう。
答え ソ=4、タ=4、チ=2、ツ=2
(3)(4)は、式の変形・代入を用いずに、
図形の等積移動や等積変換で解き切るのは相当難しいでしょう。
式の変形・代入を用いるにしても、「+と-が重なると-」、「-と-が重なると+」など、
中学校1年の数学で習う知識が必要なので、小学生にとってはハードルの高い問題でした。