2013年 北嶺中学校 理科(2)

今回は、大問4の力学分野(浮力)の問題を解説します。

昨年度の入試では、力学分野で「てこ」の問題が出題され、

重心の考え方に慣れているかどうかで大きな得点差が生まれました。

本年度も浮力の問題の練習量が十分でない受験生にとっては、

かなりの難問に思われたようです。

問題自体は大変ていねいな作りで、

浮力の基本的な考え方が、完璧な導入形式で問題文中に示されています。

上手に導入に乗って解き進めば、浮力の問題を一度も解いたことがない受験生でも

正解にたどりつくことは可能です。

ただし、導入に乗って考えること自体、小学6年生にとっては

かなりのセンス(読解力と理解力)を要求される作業です。

このレベルの問題を入試本番で正解するには、

やはり、日頃から高い目的意識を持って苦手分野の克服に取り組み、

確実に理解していくという姿勢が欠かせません。

2年続いて、力学分野の出来不出来が合否を分ける結果となりました。

今後、北嶺志望者にとっては、算国の強化と同じぐらいの比重で、

理科の力学分野の征服が合格のカギを握ることになるでしょう。

なお、問題は、標準札幌校ホームページ北嶺中学校過去入試問題

ご覧になれます。


(1)

難易度B 面白さ☆☆

浮力の分野を苦手にしている受験生は、大変多いと思います。

実際に授業で教えていると、

本問の問題文2行目から3行目にかけての

「浮力の大きさは、物体がおしのけた液体の重さと等しくなります」

の意味がわからないという声をよく聞きます。

確かに小学生にとっては、少し難しい表現です。

まずは、

重要公式

(物体が受ける浮力の大きさ)

=(液体1㎤の重さ)×(水面下にある物体の体積)

という形で公式を理解することが大切です。

さらに、問題文4行目から5行目にかけての内容を、

重要法則

物体が水面に浮いているときは、

物体の重さと、物体が受ける浮力の大きさが等しい

という法則として覚えましょう。

この2点をきっちりと押さえた上で練習を積めば、

必ず浮力の分野の理解が進むはずです。

出題パターンは限られているので、

一気に得意分野にすることも可能です。

まずAです。

鉄球が受ける浮力の大きさは、上の重要公式どおりに、

(水1㎤の重さ)×(水面下にある鉄球の体積)で求められます。

鉄球は、1×40=40(g)の浮力を受けるので、

ばねはかりにかかる重さはその分軽くなり、320-40=280(g)となります。

次のBは、(水面下にある鉄球の体積)を答えればよいので、300(㎤)となります。

最後のCでは、上の重要法則から、木片が180gの浮力を受けることがわかるので、

水面下にある木片の体積は、180÷1=180(㎤)となります。

答え A 280  B 300  C 180


(2)

難易度C 面白さ☆☆☆☆

図6は40㎤あたりの重さで比べれば、(水40㎤の重さ)<(鉄球40㎤の重さ)となるので、

右側が下がることは容易にわかります。

問題は図7です。

ここでは、ビーカーの中の水がその体積も重さも変えずに、

瞬間的にゼリー状に固まったと想像してみましょう。

その状態で、右側のビーカーから木片をぬき取ります。

すると、(1)のCより、ゼリーの真ん中に180㎤の穴があくことになります。

この穴に180㎤の水を入れると穴がうまりますね。

次の瞬間に、ゼリーが水にもどったとします。

左右のビーカーには全く同じ量の水が入っているので、当然つりあいます。

水1㎤の重さは1gなので、穴に入れた180㎤の水の重さは、1×180=180(g)です。

木片の重さも180gなので、最初の状態でも左右がつりあっていたことがわかります。

答え カ

 


(3)

難易度B 面白さ☆☆

この問題も、重要公式と重要法則の理解につきます。

氷の重さは、0.9×20×20×10=3600(g)なので、

重要法則より、浮いている氷が受ける浮力の大きさは3600gです。

次に重要公式から、水面下にある氷の体積は、3600÷1=3600(㎤)とわかります。

氷は水中に、3600÷(20×20)=9(㎝)の深さだけ沈んでいるので、

水面から出ている部分の高さは、10-9=1(㎝)になります。

答え 1㎝

※ 算数の逆比の考え方を応用して、

水と氷の1㎤あたりの重さ→1:0.9=10:9から、

同じ底面積で同じ重さの水でできた直方体と、

氷でできた直方体の高さの比が9:10と考えられれば、

さらに容易に、水中にしずんでいる氷の深さが9㎝とわかります。

 


(4)

難易度B 面白さ☆☆☆

(2)と同様に、水をゼリー化して考えましょう。

木片を氷に置き換えても全く同じです。

氷がとけて水になっても全体の重さは変化しないので、当然、水面の位置は変わりません。

答え ウ

 


(5)

難易度B 面白さ☆☆☆

図9・図10より、1㎤あたりの重さで比べると、

(食塩水1㎤の重さ)>(水1㎤の重さ)>(エタノール1㎤の重さ)となります。

重要公式から、受ける浮力の大きさは、

(食塩水にしずめた場合)>(水にしずめた場合)>(エタノールにしずめた場合)となります。

ばねはかりの値は、受ける浮力の分だけ軽くなるので、

(エタノールにしずめた場合)>(水にしずめた場合)>(食塩水にしずめた場合)となります。

答え カ


(6)

難易度B 面白さ☆☆☆

重要公式より、鉄の器が受ける浮力の大きさは、1.2×1000=1200(g)です。

次に重要法則より、浮いている鉄の器の重さも1200gとわかります。

よって、器に使われている鉄の体積は、1200÷8=150(㎤)となり、

もとの立方体から鉄を、100-150=850(㎤)だけくりぬけばよいことがわかります。

答え 850㎤

※ 鉄でできた船が水に浮くのも、全く同じ原理です。

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